SPQR旗艦モデル「THE SPQR」— 国産手巻き時計という選択

手巻き時計

こんにちは、水先案内人です。
今回は、日本の独立系時計ブランドSPQRの旗艦モデル「THE SPQR」について書きます。

この記事を作成するにあたり、SPQR様より写真掲載の許可をいただきました。ありがとうございます。

SPQRとは

SPQRは、長野県・諏訪地方で2000年に誕生した日本の独立系時計ブランドです。創業者の清水新六氏は、もともとセイコーエプソン、旧諏訪精工舎で商品企画に携わっていた人物です。

その後、「飽きのこない、長く愛用できる時計」を作りたいという思いから独立し、時計企画室コスタンテを設立しました。ブランド名のSPQRは、イタリア語の「Superiore Precisione Qualita Riservato」に由来するとされています。意味としては、卓越した精緻さと品質を約束する、というものです。

SPQRの時計には、一貫して「飽きのこない時計」を作るという姿勢があります。流行を追いかけるのではなく、時間が経っても身に着けられること。時代に合わせすぎず、むしろ少し遅れているように見えるくらいの普遍性を大切にすること。

その姿勢は、私が時計に求めるものとも近いです。時計は、買った瞬間だけ楽しいものではありません。むしろ、使い始めてからの時間の方が長い。だからこそ、見た目の派手さより、長く付き合えるかどうかが重要になります。

諏訪という土地と、ものづくりの背景

SPQRの特徴は、単に国産ブランドであることだけではありません。少量生産で、各分野の専門家が関わりながら時計を作っている点にもあります。デザイナー、時計技師、伝統工芸の職人などが関わり、文字盤や部品に日本の工芸素材を採用したモデルも展開しています。有田焼や木曽漆など、日本の伝統工芸と時計を組み合わせる取り組みは、SPQRらしいものづくりの一つです。

時計は工業製品です。しかし、ただ正確に時刻を示すだけなら、クォーツ時計やスマートウォッチで十分です。機械式時計を選ぶ理由は、機能だけでは説明しきれません。どのような人が、どのような考え方で作っているのか。どの土地で、どのような技術が積み重なっているのか。そうした背景も含めて、時計を見ることになります。

SPQRの場合、その背景に諏訪という土地があります。日本の時計産業と関係の深い土地であり、精密機器のものづくりが根づいた場所です。その土地で、長く愛用できる時計を作ろうとしていることに、私は惹かれます。

「ときのつくり手」という考え方

SPQRの公式サロン兼工房は、「ときのつくり手 時計企画工房SUWA」と呼ばれています。「ときのつくり手」という言葉は、時計を作る人たち自身が、時を作り出すという意識を持っていることを表しているように感じます。

このサロンは、元時計博物館勤務の小口いづみさんがSPQRの魅力に惹かれ、より多くの人に伝えたいという思いから設立したものとされています。公式サロンでは、機械式腕時計の組み立て体験も行われているようです。有資格の技師の指導を受けながら、自分自身で時計を組み立てる。これは、ただ時計を見るだけでは得られない経験です。

時計は、完成品として眺めるだけでも楽しいものです。ただ、自分で組み立てたり、仕組みを知ったりすると、見る場所が変わります。文字盤だけではなく、ケース、針、ムーブメント、リューズ、風防、ベルト、バックル。それぞれに意味があり、設計があります。時計を「持つ」だけでなく、「理解しながら使う」方向へ近づける取り組みだと思います。

THE SPQRという旗艦モデル

SPQRの中でも、手巻きモデル「THE SPQR」は旗艦モデルと位置づけられる一本です。この時計は、SPQRの考え方をかなり分かりやすく形にしたモデルだと思います。大きな特徴は、国産の手巻き機械式ムーブメントを搭載し、パワーリザーブ表示を備えていることです。

手巻き時計は、自分でリューズを回してゼンマイを巻き上げます。その動力で針を動かす、きわめて分かりやすい仕組みです。一方で、機械式時計には「あとどれくらい動くのか」が分かりにくいという面があります。

その点、THE SPQRにはパワーリザーブ表示があります。文字盤上で残りの駆動時間を確認できるため、いつ巻けばよいのかが分かりやすい。これは手巻き時計に不慣れな人にとって、かなり実用的な機能です。手巻き時計の良さは、自分で管理できることにあります。そこにパワーリザーブ表示が加わることで、管理しやすさがさらに増しています。

デザインについて

THE SPQRのデザインは、かなりクラシックです。アイボリー系の文字盤、アラビアインデックス、青い針、ボックス型のサファイアクリスタル。現代的な派手さではなく、古典的な腕時計の良さを丁寧にまとめた印象です。

特に目を引くのは、青い針です。白やアイボリー系の文字盤に青い針を合わせる構成は、古典的でありながら視認性も高い。装飾としても機能としても、よくまとまっています。

文字盤は中心がわずかに盛り上がった曲面形状で、それに合わせて長針や秒針にも緩やかなカーブ加工が施されているとされています。こうした部分は、写真だけでは見落としがちです。しかし、時計を実際に使うと、光の入り方や針の表情に差が出ます。

派手ではないけれど、細部に手が入っている。そのような時計は、長く使うほど良さが見えてくると思います。

ケースサイズは約37mm。現代の腕時計としては控えめなサイズです。ただ、私はこのサイズ感はかなり良いと思います。大きすぎない時計は、スーツにも合わせやすく、長時間着けても疲れにくい。時計が主張しすぎず、道具として生活に収まります。

着用感と使いやすさ

THE SPQRは、ケース径約37mm、厚さ約10.8mm、重量約70gとされています。数値だけを見ると、かなり日常使いしやすい範囲です。機械式時計は、重さや厚みが気になることがあります。特に初めての機械式時計では、見た目の格好良さだけで選ぶと、着け心地で苦労する場合があります。

その点、THE SPQRは大きすぎず、重すぎない。シャツの袖にも収まりやすく、ビジネスでも使いやすい時計だと思います。

ベルトにもこだわりがあります。モデルによって、カーフレザーやクロコダイルなどが組み合わされ、バックルには三つ折れプッシュ式バックルが採用されています。革ベルトの時計は、着脱のたびに穴周辺が傷みやすいものです。三つ折れバックルがあると着脱しやすく、落下防止にもなります。このあたりは、日常的に使う時計として地味に効いてくる部分です。

時計は、見た目だけでなく、毎日使うときの扱いやすさが大切です。その意味で、THE SPQRは初心者にも扱いやすい構成だと思います。

初めての機械式時計としてどうか

THE SPQRは、初めての機械式時計としてもかなり良い選択肢だと思います。理由は大きく四つあります。

第一に、サイズが扱いやすいことです。37mm前後の時計は、腕への収まりが良く、服装も選びにくい。流行の大型時計とは違いますが、長く使うならこのくらいのサイズは安心感があります。

第二に、デザインが普遍的であることです。クラシックな文字盤、青い針、控えめなケースサイズ。年齢を重ねても使いやすい時計です。

第三に、パワーリザーブ表示があることです。手巻き時計は、慣れるまでは巻き忘れや残り時間が気になるものです。その点、パワーリザーブ表示があれば、今どれくらい巻かれているのかを確認できます。

第四に、国産ブランドとしての安心感です。機械式時計は、買って終わりではありません。長く使うには、修理やオーバーホールが必要です。SPQRは公式サロンを持ち、メンテナンス相談ができる体制があるため、初めての機械式時計でも付き合いやすいと思います。

まとめ

THE SPQRは、派手な時計ではありません。しかし、長く使うことを前提に考えると、とても魅力的な時計です。国産手巻きムーブメント。パワーリザーブ表示。37mmの扱いやすいサイズ。クラシックな文字盤と青い針。サファイアクリスタルと5気圧防水。そして、諏訪という土地と、SPQRのものづくりの背景。これらがまとまっているところに、この時計の良さがあります。

手巻き時計は、自分で巻かなければ止まります。その代わり、自分で巻けば動き続けます。この分かりやすさが、私は好きです。THE SPQRは、手巻き時計に興味を持った人が、国産時計という切り口から最初に検討する一本として、十分に候補に入る時計だと思います。

機械式時計を初めて選ぶ人にも、すでに時計を持っている人にも、静かにおすすめできる一本です。

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